AEVE ENDING
「蝶よ花よでアナセスを可愛がってきたあなたには、刺激が強すぎるでしょうけど」
「アナセスを可愛がってるのはおまえも同じだろ!」
多少の気恥ずかしさを覚え声を上げるが、ニーロはすかした顔でさらりと流す。
「お兄ちゃんと違って、お姉ちゃんは妹の恋と妊娠を素直に喜べるものよ」
それはなかなかな言い分ではないか。
こちらとてその気持ちはある。
寧ろ全世界の全てがアナセスに優しく美しく、彼女の願う通りになればいいと常日頃から神に祈る毎日だ。
それを口にすれば。
「でも、アナセスがシュラに抱かれるのは嫌なんでしょう」
そういうの、なんて言うか知ってる?
なまじあちらの言い分が正しい故、反撃ができないまま無言でニーロを見る。
細い眉がいやらしく釣り上った様を見て、嫌な予感はしたのだ。
「ブラコンって言うんだよ、ロビン」
これまた水が刺された。
ニーロの代わりに口を開いたのは「マリア」の最年少アダム、ジニーである。
最年少といっても、シュラの三、四才下というくらいだが。
「ジニー、気配なしにテレポートするのはやめてったら。驚くわ」
とっておきの台詞を横取りされたニーロが刺々しくジニーを叱る。
叱るのはいいが、ジニーの耳は自分に都合が悪いことは左から右へ流れるお勝手耳なので、効果はない。
勿論、それはニーロも承知の上ではあるが。
「フフン」
ぎょろり、と魚のようなジニーの目が動く。
年のわりに垢抜けているジニーは、よく言えば達観したこどもで、悪く言えばただの生意気なクソガキだった。