AEVE ENDING
「妄想も甚だしいタヌキだろう、…殺しかけたのはやり過ぎだったかも知れんが、まあ構わぬよ。私も昔から、アレは気に喰わなかった」
「死ねばよかったのに。あんなものに触られるなんて」
「消毒しろ」
「僕らの判決は?」
男にしては珍しい冗談をさらりと流して、雲雀に更に問うた。
男は表情を改めることも、厳粛を求めることもしない。
「…無罪かな」
相変わらずふざけた物言いをする。
男は全世界の司令塔にはあるまじき無邪気さを兼ね備えた人物だった。
「それで、彼女の様子は?」
「今はもう安定してるよ」
―――男の、橘倫子への借り。
それは国家の陰謀による、橘倫子というひとりの人間が研究材料にされたことへの罪悪、だった。
アダムの行く末を監視し、面汚しを裁き処分するのが男の役目ではあるが、倫子の件は人間がしたこととはいえ、根本的な原因は、「新人類アダム」なのである。
アダムという存在に焦がれた人間が、同じ人間を傷付け、造り変える―――。
それも、幼い少女の体を。
『赦せ』
―――新人類「アダム」という、特殊な組織。
そのトップに立つ男がその研究に気付いた時には既に、橘倫子はアダムとしての道を歩まざるをえなくなっていた。
アダムの一員としての、彼女への贖罪。