AEVE ENDING





―――関連が、在る。



彼女が唯一、吐き出した死の香りを。

その原因を、作ったのは。



『君は、私の子ではないから』

『…君は美しい、あまりにも、美しくなりすぎた』


あぁ、なんて―――。







「穢らわしい…」


目の前に広がる過去の遺物も、それに携わった人間も、己の手、すら。


「…君の両親は治療中だ。訊きたいことがあるなら、それが済んでからにするんだな」



―――何故、死んでいない。

あれほどの罪を犯していながら何故、未だ生きている?


(橘、橘、橘…)


アタマガイタイ。






「…殺すな」

彼女に傷を付けたすべてにを、血祭りにして塵も残さず消してしまいたい。


「それはお前の仕事ではないよ」

たしなめられたところでどうなると云うのか。

こんなにも美しい世界で、こんなにも醜い生き物が息をしている。



(汚い…)


なにもかも、僕で、すら。





「雲雀」

それは制止か、或いはただの代名詞か。

つい、と伸ばされた雲雀の指先が、山のように広がる写真へと触れる。




『―――なんで、暴くの…』

悔しさに泣いたあの声はいつだって切実に願ってきた。

暴くな、暴くな暴くな暴くなと。





「…こんなもの、要らない」

指先から、音もなく写真の表面へと火が放たれた。

元々が引火性の物質だったように、憐れな肢体を映す写真はたわいもなく燃えてゆく。



「…重要な資料だぞ」

咎めの声。

「頭の中に記憶していれば、それで充分でしょ」

なにせ我々はアダムであり、目の前の男はその最高位に立つ男だ。

もう、何年も、何年も。

孤高のまま、この部屋で世界を眺めている。



「こんなものが残ったままじゃ、橘も安心できないもの」

完全に塵と化したそれを見やり、今頃は部屋で眠っているであろう人物を思い描く。

用心として、真醍と鐘鬼を置いてきたため、無知な虫螻の暴挙に巻き込まれることもあるまい。




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