AEVE ENDING
「…感化されたものだね」
感嘆。
自覚はあるので、反論はしない。
愉快だと言わんばかりに眼を輝かせている男を冷ややかに見つめ、雲雀は残りの件を済まそうと口を開いた。
「ところで、桐生の件だけど」
「あぁ、解っている。君の弟君についてだろう。処理しておくよ」
「結果次第、すぐに連絡を」
「…この私をこきつかうのは君くらいだ」
「精々、老体に鞭打って頑張りなよ」
「老体とは穏やかじゃないね」
「そう?」
戯言を口にしながら机上に山となった塵を戯れに吹く。
軽くなったそれは抵抗なく空気に浮いて、融けた。
「もう行くがいい。審議の沙汰は、私からうまく箱舟連盟へと通達しよう」
お前もさすがに疲れただろう、と男が目の前に立つ雲雀を見やれば。
「…頼むよ」
(―――おや、殊勝な)
よもや「修羅」からそんな台詞が出るとは思いもよらず。
成長したと喜ぶべきか、「修羅」としての気質が甘くなったと嘆くべきか。
(…やっと鳥籠から這い出てきた)
外への導きは、橘倫子。
大変、興味深いではないか。
模す者と模される者。
射る者、射られる者。
崇められる者、貶められる者。
創る者、壊す者。
表裏一体であろう二人の行く末になにが待つのか。
歯車ならばとうの昔に、噛み合うことを忘れてしまったというのに。
(焦がれて墜ちるなら、)
ならば君の胸で在りたいと、らしくなく願う。