AEVE ENDING
「…合衆国側は納得しないだろうな」
鐘鬼の呟きを、雲雀は鼻でせせら笑う。
確かにそうだろうが、こちらには都合良く、合衆国チーム「マリア」はアナセスが率いている。
「聖人が率いるチームだよ。馬鹿馬鹿しい口上を述べて、橘のことなどあっさり許すだろうね」
僕の手前もあるし。
―――そういけしゃあしゃあと口にする雲雀に、鐘鬼は深く溜め息を吐いた。
丸くなったとはいえ、唯我独尊ぶりは健在らしい。
それがなくては、寧ろ寂しいだろうか。
「問題は、あのロビンとかいう男とここの生徒達だ」
あれだけの暴走を起こした生徒達が、倫子の無罪を受け、今後いかように動き出すか。
面白く思わないのは確かだろう。
(…橘から目を離すわけにはいかない、か)
それに関しては真鶸が自ら進んで監視役を勤めてくれるだろうが、しかし限界もある。
なにせ彼女は、自ら喧嘩を買いに出るような女なのだ。
(…橘の喧嘩っ早さを止めるには多分、あのアミって子が一番効果的なんだろうけど)
しかし、倫子はアミの介入を嫌がるだろう。
落ちこぼれと行動を共にするだけでも、他の生徒達からの反感を買いかねないからだ。
倫子が連行されてすぐのダンパの様子を奥田から聞くに、生徒達の怒りは頂点に達していたらしい。
元々、嫌悪され差別されていた存在だ。
今回の暴挙と普段の傍若無人ぶりは、生徒達には相当の衝撃だっただろう。
全生徒の羨望の的である雲雀のパートナーでありながら、あの落ちこぼれっぷり。
「修羅」である雲雀への無礼千万な言葉や態度は数知れない。
そこへきて、合衆国アダム達の目の前での暴挙―――外交官夫婦への暴行にくわえ、美しいアナセスへのはた迷惑な拒絶。
なにより、外交官夫婦が雲雀の両親であったことも大きく影響しているだろう。