AEVE ENDING





『雲雀様のご両親に、あんな真似をするなんて』
『アナセスの手を振り払ったの見ただろう?』
『あの気違いめ、あんなもの、身内から出た錆だ』
『誇り高い我々アダムからあんな落ちこぼれが産出されたなんて、考えたくもない』
『処刑されてしまえばいいのに』
『あれがいなくなったところで、誰も悲しみはしないよ』
『いつか「修羅」の罰が当たるだろう―――』


無恥な橘倫子に制裁を、とダンパを楽しむ中でまるで呪文のように唱えられていたという。

奥田にその後の様子を見ていろと言いつけられたアミに至っては、あまりに多くの生徒達が「橘」の名を忌々しく呼ぶせいで気分を悪くしたらしい。


―――ヒトの悪意は、時に、ヒトを殺すのだ。



倫子が独房から逃亡したという情報は、まだ一般生徒達には流れていないらしいが、それも時間の問題だろう。

倫子の気配をずっと絶って、この部屋に閉じ込めておくのは無理だ。

そして全アダムトップの決断とはいえ、倫子の無罪、お咎めなしを聞けば、生徒達は黙ってはいまい。

箱舟という庭で、悠々自適に生活している家畜達のなんと臆病で惑わされ易いことか。

なまじ、人類の亜種「アダム」という特異な存在だからこそ尚更、その無駄に高いプライドと同族意識が幅を効かせている。


『ヒトもアダムも、なにも変わらない』

そう憮然と吐き捨てたのは、彼女だった。

―――ぼんやりと、パーティ会場での出来事を思い出す。







『コロセ!…コロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセ…!』



あんな狂気には、もう二度と曝したくない。

―――迫害されるは、彼女ではないというのに。






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