AEVE ENDING
「…あれ、」
どうやら倫子が横になっているのは雲雀の部屋であり雲雀のベッドの上らしい。
真鶸は恐らく倫子の部屋だろうと見当をつけて、何故雲雀に抱き枕にされているのかと考える。
こんな大胆な寝相は持ち合わせていない筈なので、やはり雲雀が連れてきたのだろうか。
騒ぎがあって夕刻、ふらりと出て行ったかと思えば、倫子と真鶸が眠るまで戻ってこなかった。
(私が寝てる間に戻ってきて、こっちまで移動させたのか)
考えれば大した面倒だが、それが嬉しいのは当然のこと。
緩む頬をそのままに顔を上げ、辺りを見渡した。
テラスへと続く巨大な窓の外はいつもと変わらず暗雲が立ち込める朝である。
いつもより仄暗いのは、天気が芳しくないからだろう。
時間を見れば起床にはまだ余裕がある。
早寝したせいか、あまり睡眠欲は湧いてこなかったが雲雀の腕と体温が心地良かった。
二度寝と決め込み、再び布団へと潜る。
「ん、…」
頭上から届く微かな寝息に妙に楽しくなり、相手が寝ていることを良いことにその胸に抱きついてやった。
普段、互いに起きている状態であれば照れ臭くてできない行為も、語らない寝姿相手なら容易い。
とくとくと鳴る心音と、柔らかな寝間着が肌に優しい。
うつらうつらし始めた時、見計らったかのように背中に腕が回った。
ゆるく抱かれたそれに、自分でも馬鹿馬鹿しくなるほど安堵して、調子に乗って自分から更に抱きついた。
背中に回した腕は雲雀の胴の細さを如実に感じとり、浅い嫉妬を抱いたりして。
(こういうの、しあわせだ……)
それを味わう資格がないだなんて、雲雀は言ったりしないから。
動物のように触れ合いたくて、飾らずに伝えたくて、少し考えた後、目前にある綺麗な顎に口付けた。
「口にすればいいのに」
ぱちり。
思いの外はっきりと開けられた漆喰に、驚愕する前に蒼白になる。
残念がるような、からかうようなその台詞に。