AEVE ENDING
「兄様、倫子さんは」
真鶸が慌ててこちらを振り向く。
可愛い可愛い真鶸はいつだって倫子の味方らしい。
あんな兄に似なくて良かった、本当に。
「倫子さんが外に出るのは危険過ぎます。また他の人達になにかされたら」
不安げな顔は、倫子を心配するものだ。
優しい。
「まひわー」
思わず駆け寄ってその小さな体を抱き締める。
まだまだ成長過程、歳のわりに低い背の真鶸は、顔を真っ赤にしてもたついた。
「…それで?」
しかし、雲雀は相変わらず玲瓏な表情のままそう尋ねてくる。
しっかりと倫子を見据えてくる眼は、いつだって。
「どちらにしろ、危険なのは変わらないよ」
―――さあ、どうする?
その眼が静かに問う。
決定権は私にある。
雲雀は誰より、私を知っているから。
傍目からは冷たく見えるだろう雲雀の問い掛けに、真鶸が兄を説得しようと口を開く―――前に、こちらから。
「泣き寝入りなんて死んでもごめんだ」
私を許せないなら裁けばいい。
ただし、報復はその倍で返してやる。
どうしたって折れない意地がなければ、私はただのボロクズだ。
(古い記憶はいつだってこの体を蝕むけれど、)
「手は貸さないよ」
「上等」
強がりと呼ばれても、それはそれで構わない。
今はまだ強く在ることが、できる。
雲雀が、「わたし」を見ていてくれる。
「…その調子」
小さく、音もなく落とされたような微笑を浮かべた男に見惚れた。
腕の中の真鶸も同様。
(…こいつの素直な微笑みは、本当に貴重で毒だな)
そして私を、後押ししてくれる柔らかな風。
「ほら、行くよ」
「あいよ」
うん、これが在るなら、私は大丈夫。