AEVE ENDING







―――橘 倫子。

タチバナ ミチコ。


大昔に種尽きてしまい、今や人工保存種しか残っていない植物の「橘」に、倫理の子と書いて、倫子。

まあ本人を見る限り、倫理とはかけ離れた人物であるのは間違いない。

歳は十七、もうすぐ十八になるらしい。

中肉中背。
ざんばらの短い髪は縦横無尽に跳ねているが、ただの寝癖だと思われる。

アダム適性は陰性。
陰性のアダムが誕生する確率は、一千万分の一。

彼女がイヴと呼ばれる由縁でもある。

そこだけ見れば、大変希少価値のある人物だ。


(ニッポンという国は男性を陽、女性を陰に当て嵌めるというが…。なんともお国柄を示した表現だよな)

アダム能力指数は先に述べた通り、ミトコンドリア並み。
幼児クラス以下のアダムでありながら、何故か、「修羅」のパートナーを務めている。

これにはオクダという精神系アダムの教師が一枚噛んでいるらしいが、詳細は不明だ。

しかしたまに、本当にたまに実践訓練で見せる能力や身体能力には目を見張るものがあるらしい。

見た目は大変普通の、普通以下の少女ではあるが、我々の歓迎パーティの一件を考えると、ただのバカでもキチガイでもない。

修羅と共にセクションを行うことが鉄則である我々は、よくタチバナミチコを見かけるが、まあ、やはり普段はただの「バカ」としか言いようがなかった。

己が気に入らなければ相手が誰であろうが乱暴な手や足、下品な口が飛び出る。

堪忍袋へのカウントダウンはゼロより早い。





―――事例、其の一。

先日の昼、食堂の料理人(四十代のマダム)に、注文を無視されたと平手を喰らわせていた。


―――事例、其のニ。

その前日、タチバナミチコを中傷した数人の生徒らにいきなり殴り掛かるという暴挙を起こす。
結局は多勢に無勢で返り討ちにあった。しかし相手もただでは済まなかったようだ。

大半が暴力事件であり、おおらかに正当防衛と判断したとしても過剰過ぎる。


挙げればきりがない。

調査報告はまだまだある。




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