AEVE ENDING
―――チクショウ馬鹿にしやがって!
足早に回廊を抜けていく。
先にある曲がり角を抜けてアナセスがいるだろう食堂へ―――。
「…っと、!」
鈍い音と共に胸に衝撃があった。
猪でも飛び出してきたのかと思えば、そこには。
「…タチバナミチコ」
左目を真っ赤に腫らし、唇には血が滲んだガーゼ。額には擦り傷。
こちらの心臓を射抜くような、敵意剥き出しの強い双眸。
ごくり。
修羅と対峙した時のような感覚に陥った。
「…あんたは」
俺が誰か確認してすぐ、睨むような橘の視線が柔らかに揺らいだ。
彼女が飛び出してきた方向には、二人の男が倒れている。
(―――またか、)
まさか絡まれる度にあんな殺意を抱いているのか。
大変、元気な様子である。
そちらから目を逸らし、眼下の橘を見れば、訝しげにこちらを見上げていた。
見れば見るほど平凡、ありきたり。
ダンパ以来、平然と皆の前に現れた彼女をよく思う者はおらず、毎日のように生傷をこさえているような女を。
(…修羅は、こんなののどこが良いんだ)
余計なお世話なのは百も承知だが、気になって気になって仕方ない。
「あのさ、…離してくんない?」
ふと言われて、彼女の二の腕を掴んだままの自分の手に気付く。
ぶつかった勢いで、相手を飛ばさないように掴んでしまっていたらしい。
「、…」
慌てて離すが、橘は首を傾げたまま立ち去らなかった。
なんだ?
思わずこちらまで首を傾げてしまう。