AEVE ENDING
(相手はジパングで一番腕が立つアダム候補生―――修羅、だ)
賓客とはいえ彼への粗相は許されない。
自分の犯したミスに、ロビンは咥内で小さくバカヤロ、と呟く。
なので、違う視点から攻めてみることにした。
彼が大好きな、彼女を使って。
「なあ雲雀、タチバナミチコはどうしてあそこまで皆に嫌われてるんだ?見るに疎外されるほど性格に問題があるわけじゃないし、狂暴性なら雲雀のほうが危険だろ。現に、君の弟のマヒワは必要以上に懐いているようなのに」
息も浅く続けたのには訳がある。
初めて来る通路、初めて見るシンプルだが瀟洒な扉。
その扉の向こう側に身を呈し、こちらを完全に無視して空間を閉じようとした雲雀に置いていかれないためだ。
閉めかけられたドアに慌てて足を突っ込み開閉を封じれば、不機嫌に眉を寄せた雲雀がロビンを睨みつけてくる。
切れ長の綺麗なそれに怖じけづきながらも、退かないよう身を乗り出した。
「タチバナミチコは、何故、」
それは異常なまでの嫌悪感。
この西部箱舟でのタチバナミチコの存在はあまりにも。
「あれは、あまりにも、」
そうして紡ぐ先を絶句してしまうほど。
タチバナミチコにはこの箱舟の過半数が、憎悪のような感情を抱いている。
ロビンの問いに、雲雀は少しだけ睫毛を揺らした。
睨みつけていた目尻は落ち着き、音もなくロビンから視線が外される。
「…わかるんだろうね」
そうして呟かれたそれは、この男には似合わぬほど悲しげで。
「同族でありながら、異物だということ」
それは、本能だろう。
シロとクロを嗅ぎ分けられるように、生粋のアダム達は感じているのだ。
ヒトゲノムに組み込まれたアダムとしての奥底で。