AEVE ENDING
「―――あの話を進めるべきです」
ベッドに横たわったまま、美しい女の唇は憎々しげに吐き出した。
深夜。
第二級重度患者である筈の彼女は、しかし現代医学の賜か、本来なら口を開くのも一ヵ月かかるほどの怪我で今や仕事すらこなす回復ぶりである。
彼女の場合、特A級の扱いを受けているのだから、ここまで回復するのは当然かもしれなかった。
なにより、今の彼女にはさる人物への憎しみすらない。
悲しいかな。
憎しみという名の激情は、重傷人をも動かす糧になるらしい。
「えぇ、えぇ、わかっています。とにかく早急に。わたくし達の完治など待てません。聞けばあの娘と雲雀さんは、刻々と関係を深めていっているそうじゃありませんか」
あんな醜い女に美しいあの子が穢されるなんて、堪えられない。
憎々しげに吐き出した妻を電話越しの夫は宥めるようにその意見に賛同した。
元より反対する気もなかったのだ。
美しく成長した息子を、なにより自らも求めたことのある婢女に奪われたくはない。
―――ならばやるべきことはひとつ。
「早急に」
手を打たなければ。