AEVE ENDING






「はいはい、皆さん良く眠れましたかぁ?」

まだ霧が懸かる波止場。
以前、北の島へと向う際に使用した西部箱舟所有のあの波止場に、選抜されたアダム達が集められていた。

今日は、アナセス達を含んでの、初の課外授業である。

プロとして既に活動しているアダム達を講師として呼び、実際に地球救済の足掛けとなる清掃作業を行う。

清掃作業とはいっても内容は様々で、地質変動で発生した地盤沈下の管理抑制や、汚染された海洋の浄化、空気層の清浄化、空を埋める毒性雲から毒素の撤廃、力を使って自然の流れを読み、事前に災害をかわすなど、多項目に渡る仕事がある。

これらを実際に体験するというものだ。

当然、通常クラスより危険性が格段に高まる為、セクションに参加している全員を費やすことはない。

教師達が選抜した五十名をペア二十五組とし、五日掛けて将来有望なアダム達を仕上げていくのだ。


「なんで私が…」

雲雀の影響か梶本の策略か。

何故か、そんな危険なリストに倫子の名前が載っていた。

真鶸の名もあるにはあったが、まだ経験値も浅く幼いため、安全第一を考え立候補から降りた。
本来ならこの候補者に拒否権などないが、真鶸の家元と雲雀の弟だという立場を以てすれば容易い辞退だったわけだ。

そんなわけでまだ詳細はなにひとつ語られていない、課外授業の開始である。



「そういえば、真醍と鐘鬼はどこ行っちゃったわけ?」

ふと、見ない顔に気付く。
彼等の実力ならば、この場にいても当然おかしくないわけで、寧ろいないほうに違和感がある。


「実家に戻ったよ」

横に立っていた雲雀がさらりと答えた。

いつの間に話をしていたのか、つい先日、真醍と鐘鬼は北の島へ戻ったという。


「鐘鬼は半ば強制的に連れていかれたみたいだけどね」
「…自分の子供を見せたいがためにか」

らしいっちゃ、らしい。

目前を漂う靄に、家出気味だが子煩悩なサルの顔をぼんやりと思い描く。

それに付き合わされている鐘鬼も鐘鬼だが、なかなかどうして、二人は気が合うらしかった。





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