AEVE ENDING
「あいつら、四六時中一緒に居るよね」
初めて会った時、お互い血塗れにしあった仲だというのに。
「…君と居たら、毒気を抜かれちゃうから」
ぼそりと頭上から聞こえた声は珍しく聞き取れなかった。
しかし聞き返せど返事は返ってこない。
「産まれてからはちょくちょく真醍一人で帰ってたみたいだけど」
代わりなのかなんなのか、聞き取れなかった言葉の後にそう続いた。
なるほど、なかなかの父親っぷりである。
そうこうしているうちに奥田と梶本が現れた。
ついでにアナセスご一行も。
なにやら話をしているらしいが、集められたアダム達はざわめきつつ開始の号令を待っている。
(北の島、か)
懐かしい記憶だ。
足元をたゆたう波を見ながら、あの日もこの海を渡った。
『橘…、我々の、神にも劣らぬ最高傑作』
北の島で捕らえたあの男達の、それよりずっと古い記憶を。
『この体はもう、使い物にならぬ』
今でも鮮明に思い出せるのは。
肉を裂く手も、血を喰らう口も、私を殺す、心も。
『バケモノにこのような機能、要らぬだろう』
冷徹な声。
―――この声だけは、忘れられない。
(…秘密を暴かれた)
「橘」
雲雀が呼ぶ。
顔を上げれば、生徒達が一ヶ所に集まっていた。
中央には、アナセス率いる「マリア」チーム。
「今から目的地へ向かう。テレポートが使えるものはテレポートで、使えない者は船を出すからそれで移動するように!無茶をする必要はない。自分の能力を見誤らず堅実にいけ!今から言うことをよく聞いておけよ!」
梶本があらん限りの声で叫んでいた。
雲雀と倫子は皆より少し離れた位置でそれに耳を傾ける。
(テレポート…、上級手段できた。それだけアダム達のレベルが上がってるってことか)
セクション開始当時、テレポートができる者など雲雀くらいだった筈だ。
(箱舟連盟に名を連ねるプロでも、早々できないもんだと思ってたけどな)
なにせ地上の座標を把握し、空間を歪ませるような能力なのだ。
そう並大抵でできる代物ではないが、それを可能にするほど全体的にレベルが上がってきているのか。
―――それはどこか、不吉を思わせる。
過ぎた力は、破滅を呼ぶのだ。