AEVE ENDING
「…雲雀?」
問い掛けてくるそれに、再び墜ちていた意識が浮上する。
「なにボサッとしてんの」
パシリ。
軽く叩かれた腕。
こちらを訝しむように見ている倫子の頬を、いたい、と抗議して殴っておく。
喚き立てる倫子をよそに前を見やれば、プロのアダムに生徒達が群がっていた。
エントランスの先―――崩れ去った壁の奥は暗く、天空にいるというのにまるで地底に続いているかのように思う。
「この建物の解体において重要なのは、君達が己の役割をどれだけ完璧にこなすかということにある。君達は今からペアで行動し、割り当てられた区画をなるべく周囲に刺激を与えずに解体してもらう―――この仕事に選ばれた君達なら、私の言っていることがわかるな?」
ひとつの鉄筋コンクリートのビルを解体するには大編成であるこのチームに、緊張が走る。
物言わぬ強敵に、全員が息を飲んだ。
「我々の監視下にあるとはいえ、油断すれば命にかかわる危険性がある。君達はこの地球の命運を任せられた新人類アダムだ。その誇りを胸に、慎重にいけ!」
それが、合図だった。
普段からは想像もつかないほど真剣な表情を浮かべ、アダム候補生達は一斉に四散する。
それを威嚇するように、朽ちかけた「ビル」の骨が風に鳴いた。
『雲雀という名をあげるから』
それは、罪だったのかもしれない。
『だからこの檻から、飛び立っておくれ』
始めから檻など存在しなかったのに。
『雲雀は恋を、してしまうの』
そうして施された呪いは、今も。
『でも雲雀は恋をしたら、死んでしまうから』
神の子をかどわかす太陽は、いつしかその姿を地上から消してしまった。
『―――雲雀という名を、アナタに』