AEVE ENDING
「あーあ、明日からお前と会えないと思うと、せんせぇ寂しいなぁ」
ぽつりと吐き出した言葉と共に吐き出された煙が、冷えた空気に融けた。
「キモチワル」
それに対して倫子は一言。
奥田は傷付いた。
「…フン、清々しちゃうよ」
ひくりと口許を痙攣させ、精一杯を吐き出した奥田の言葉にふと疑問が湧く。
「会えないって?」
明日から?
「…あ、スルー?」
セクションは確かに明日からの開始だが、「会えない」とは、どういう意味なのか。
セクションの活動範囲は、あくまでこの西部箱舟がメインの筈だ。
例え外部で活動したとしても、唯一の保健医である奥田が引率に加わらないわけがない。
「会えないってどういうこと」
問い詰める倫子に、奥田は拗ねたように唇を尖らせた。
「合同セクション」
いやそれはわかってる。
教師の監視下で行われるセクションにおいて、「会えない」とはどういう意味なのか。
「お前、修羅と組まされたお陰で全アダムの顰蹙買っただろ」
ぶぅ、と大人げなく吐き捨てる奥田に。
いや、組ませたのはお前だろ、との指摘は飲み込んだ。
「東部アダムの修羅への信望は半端ないからさぁ。暴動でも起きかねない、つってね」
奥田の言葉に、夕刻、次から次へと部屋へ訪れた狂信者達の姿が思い浮かぶ。
「それで、他の先生方が対暴動策として、間抜けなパートナーのレベル上げに努めようって」
ちらりと奥田の視線が倫子を貫いた。
「は?」
意味を図りかねて、というより理解しがたく、倫子は不愉快そうに声を荒くした。
「…可愛い子には旅をさせろ、ってね。涙を飲んで崖へと突き落とせ、お前が強くなって這い上がってくるのを待ってるゾ!」
ぐっと拳を作りながら吐き出された芝居じみた奥田の言葉に頭が真っ白になる。
そんな倫子に、先程の仕返しと言わんばかりに奥田は厭らしい笑みを浮かべた。
「…お前、明日からサバイバルコース入り、な」
ご愁傷様。
奥田は眉尻を下げて倫子に同情した。
勿論、単なるポーズである。
しかし倫子は、それに対して怒る余裕もなかった。
「サバ…?」
聞き慣れない言葉に平穏な響きは感じられない。
含まれる要素といえばまさしく狂気、だ。