AEVE ENDING
真実はいつもこの胸に在ると信じてきた。
例えなにが虚像だとしても、それは必ず象(かたち)となり真実となると。
(―――神の子、神の子、神の子、破滅遺伝子を組み込まれた、至高の息子)
反響する言葉はまるで虚像のようなのに。
『違うだろう』
それなのにだからこそ、真実ではないのか。
「兄様が、棄て子…?」
思わず、繰り返していた。
その声に反応した真鶸の両親が、慌てたようにこちらを振り向いた気配がした。
扉は閉めている。
早くこの場を去るか隠れるかしなければならない。
真鶸は蒼白のまま扉から跳ね退き、死角である太い支柱へと身を寄せた。
「…誰か、いるのか」
それと同時、父親が堅い表情で扉を開け、人っ子ひとりいない廊下を見渡した。
神妙な顔、皺が刻み込まれた眉間は更に深くそれを刻み、訝しみながらも再び身を翻し扉を閉める。
(父様…)
彼のあんな表情など、見たことがなかった。
いつだって柔和に微笑んでいたその端正な顔は、生涯、崩れることを知らないようですらあったのに。
だからこそ、その表情は真実を語るのだ。
(…兄様、)
呆然とする真鶸の耳に再び、微かな話し声が届く。
―――ゴクリ。
理解が及ばない。
暴れ馬の如く跳ね上がっている心臓を落ち着かせ、再び神経を集中させた。
(聞きたくない)
聞きたくない、けれど、聞かなければならないと本能が告げていた。
「―――確かに雲雀さんは、わたくし達の子ではありません。ですが、あの方は神の血を引く者、神が手放された、唯一の御子なのです」
母親のヒステリック染みた声は未だおさまらない。
真鶸の頭の中では、ただ雲雀の顔がぐるぐると廻っていた。
「だがね、彼は我々人類に鉄槌を下す存在…、不穏分子だ」
いつから、だったか。
ヒトの道がふたつに別れ、ひとつは滅亡へ、もうひとつは繁栄へと続くようになったのは。