AEVE ENDING






『何代かかっても構わない。この遺伝子を持つ者が、未来で産まれるように』

永久に続いた輪廻はなにより、何代もの苦しみを産み出すしかなかったものだった。


『覚醒遺伝、というものを、知っているかね?』

本来の遺伝子に、隠すように組み込まれた破壊遺伝子を持つ何万人という選ばれた者達は、孤独の底で死んでいったのだ。


『そう、ずうっと昔から、見てた』

生物学をはじめ、多種に渡る技術に長けていた日本の、唯一の、神への反逆―――人類への、希望、期待、負荷。



『我々は、やり直さなければ』

激化する温暖化、南極北極の溶けた氷、海洋水位の上昇、湖沼の消失、消えていく陸地、海水·大気汚染、少子化に伴う高齢化、国家間の紛争、生物兵器の使用、―――ヒトが生きていけない環境になりつつある、銀河の青い星。

自滅の一途を辿る人類の、唯一の選択肢は。





『時限爆弾を作ろう』

それはこの世に絶望した一人の学者の、たった一言から始まったのだ。


『ヒトの道は、ヒトで絶たなければ』

ヒトの遺伝子を人工的に組み変えて、未使用のまま固くなってゆく脳の力を百パーセント発揮できるよう改良を加える。
そうして「失敗」に「失敗」を重ね、多大なる犠牲を払いながら、それはやはり腐りゆく世界の裏で秘密裏に行われていった。

政府にも報告されず、ヒトの業に絶望した学者達の、唯一の足掻きとして。


(必死だったんだ。ヒトの肉を骨を裂き、悲鳴を耳にしながらそれでも、未来の為に)


未来が在ると、胸に掲げ。





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