AEVE ENDING
『様々な人間で試したよ。赤ん坊、幼児、少年、少女、青年、成人した女性、男性、老人、腫瘍を持つ人、持たない人、健康体、健康体ではない患者……様々な、ね』
伴う精神の痛みに耐えながら、いや、耐えきれず、しかしやり遂げようと発狂していった学者達はとうとう成功を手に入れた。
『生きて、いるのか…』
様々な人間の血にまみれた寝台に横たわる、一人の少女の瞼、が。
そうして開かれた眼はまるで、赤ん坊のようだった。
『あぁ、そうだな…』
産まれたそれは、人外の能力を持っていた。
風を操り、雷を呼び、呼吸でヒトを殺す。
『この醜い世界に、おまえは美し過ぎる』
自らが造った筈のそのバケモノはあまりにも高尚であり、醜く、美しく、なにより、澄んでいた。
この淀んだ世界では、抱えきれないほどに。
そうしていつしか、自らの手で造り上げた彼女を、産みの親達は「神」と、呼び始めたのだ。
『いつか、そうして君の力を受け継ぐ者が現れたなら、その時は』
発狂した男達は、彼女に祈った。
いじくり尽くされたその「バケモノ」は、「神」として目覚め、そして生き、孕み、産み、受け継ぎ、死んでいく―――けれど、破滅への螺旋は終わらない。
『そうして繰り返された産出、交配、回帰の末端が、「アダム」の誕生に繋がったのだよ』
もう誰も、知ることのない、罪の名を。
やがて長い刻を経て繋がっていった一本の糸は、いつしか終わりを迎える。
千切れることを知らない糸など、存在しないのだ、どこにも。
『判断は、神に任せよう』
そうして、いつか覚醒し、顕れるだろう人工でありながら神の称号を持つ遺伝子が、この世になにを見るのか。
見届けられぬ己達の代わりに、あてどない刻に責任を負わせて。