AEVE ENDING
『やっと、顕れた』
男は言った。
国に認定されている、人類初のアダムとして。
けれど、裏の歴史を唯一知る者でもある、語り部として。
『君は初代の血を一番濃く受け継いでいる』
―――「初代」。
気が遠くなるほどの昔、ヒトの手によって誕生したヒトではなくなってしまった少女を、彼はそう呼んでいた。
先の人類の栄華を誇った「砦」で、親のない僕を育てながら、彼は語り部として生きて―――本来なら、既に朽ちてもおかしくない年月を生きていたが、政府の命令で「箱舟の傍観者」として長く長く長く、生かされている哀れな男。
そうして彼は、繰り返し繰り返し、言い聞かせるのだ。
繋がり続けた輪廻のように、僕に。
『君には務めがある』
それは数百年前から、もしかしたら、この惑星が産まれた時からの、定めだったのかもしれない。
『けれど、選択肢は君にある』
だからこそ必ず、選ばなくてはならない。
『君が、』
世界に絶望したなら、終焉を。
『けれど君が、この世界に希望を見たのなら』
子を成し、次に引き継げ。
何代にも渡って破壊の遺伝子を伝え続けた彼らは、終焉を迎えるためだけに生きてきた。
この醜い世界にただ悲しみしか見い出せず、破壊の遺伝子を持ちながら、役に立たない無力な「繋ぎのパーツ」としての己を呪いながら、それでも忠実に、繰り返してきたのに。