AEVE ENDING
(本当に、ただのこどもなのか?)
いいや、「彼」がアダムであるのはわかっている。
わかってはいるがしかし、この異質さはなんだ。
(この私が、圧される)
先程から異常なまでに高鳴る心臓に眉を顰める。
伝承され続けてきた「初代」の、最期の願いは。
『一体、どのように彼らを、…殺したのかね』
不躾な質問であった。
しかし、桐生はひたすらにこのこどもに興味を示しているらしく、幼いこどもを相手にしている自覚もなかったであろう。
そうして、今より無邪気さを伴う「彼」も、やはり気安く答えたのだ。
『大したことはなにも。…ただ、心臓の機能を停止させただけだよ。血液の循環を止めるのもひとつの手だけど、それは苦しみを産むから。一瞬で、本人すら気付かないうちに、死ねるように』
この言葉は、誰の言葉だ。
『苦しみはなにも産み出さない。けれど私は今それに苛なまれている。ならば他者には与えまい』
―――初代。
『見つけた…』
神の、生まれ代わり。
とうとう、長い輪廻を経て、辿り着いたのだ。
この腐敗した世界に。
(この世界が、本当に存在すべきなのか)
すべてはいつか生まれてくる、神の子に委ねましょう。
「そうして連れ帰り、あの場所で育てた」
絶海の孤島。
何者の侵略も赦さない、物言わぬバケモノの腹の中で。
「政府に言う必要はなかった。数百年も昔の罪など、知る者は既にいなかったのだから」
「我々が伝承者として唯一、受け継いできた真実だった」
赦される筈もない人体実験。
そうして産まれた人類初の「アダム」は人工であることを隠蔽され、神の仕業として地に降り立ったのだ。
そうすべて、ヒトの愚かさが産んだ悲劇。
今も全人類を騙し、「アダム」はヒトが進化した姿だと。
気高い「亜種」であると、詠い。