AEVE ENDING





「そうして神は、安寧を見つけた」

皮肉であった。

己の何代も経た前世と、同じ命運の少女に。



「―――何故、彼女でなくてはならなかったのか」


探していたのだ。
神はずっと昔から、探し続けていた。


「己を殺す者を、産まれる前から、ずっと」

破壊しか見い出せない己の身を憂い、それを誰にも見せず、祖先の恨み言にがんじがらめにされ、それでも果たさんと、歩いてきたのに。



『―――雲雀』

なにも含まず、その名を呼ぶ者を。

『…雲雀、』

神ではなく、その名を、呼ぶ者に。



(―――橘が生きるなら、僕は)




選択肢なら、ある。

「修羅」に課せられたふたつの使命、どちらか。




『君には務めがある』

それは数百年も前から、或いはこの惑星が産まれた時からの、定めだったのかもしれない。


『選択肢は、君に』

必ず、選ばなくてはならない。


『君が、』

世界に絶望したなら終焉を。

『けれど君が、この世界に希望を見たのなら』

子を成し、次に引き継げ。




「…雲雀がそのどちらを選んでも、あの娘には苦痛となろうな」

桐生がぽつりと吐き出した。
できればもう、雲雀には血を吸わせたくないと願う慶造は、その言葉に表情を強ばらせる。


「まさか、…いや、やはり、そうか…」


絶望は、ずっとずっと近くにあったのだ。

「奇跡が起きぬ限り、それは叶わぬ夢よ」







『この檻から飛びたって』

貴方には、翼があるから。

『けれど太陽にだけは、恋をしてはいけない』

雲雀は太陽に恋い焦がれて恋い焦がれて、死んでしまうから。


『神よ貴方は、』





「真鶸を、」

かつり。

響いた微かな物音は、桐生のその指先から紡がれたものだった。

緩やかな空気が無駄に張り詰めている。

今にも張り裂けんばかりの酸素と塵が、桐生と慶造を包み込んでいた。



「真鶸をアダムにしたのには、訳がある」

ないわけはなかったが、桐生はあえてそう口にした。

だからそれは。



(それは懺悔、ではない)






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