AEVE ENDING
「病弱な身体を強靭にするために、親に頼まれたか」
慶造が囁くように問う。
それはわざと、不正解を口にするような口調だった。
桐生はそれを、溜め息を漏らすように否定した。
「いいや…、確かに頼まれはしたが、真の目的はそれではない」
そうでは、ないのだ。
『―――美しいと思わないか』
男は言った。
醜いまでに変貌を遂げた少女を、愛しげに眺めながら。
『あの雲雀とは似ても似つかない…。醜いあの身体の中に、それなのに確かに美しい雲雀の核を有している』
ドクンドクンと脈打つ心臓は確かに生きていた。
最早生きていると信じたくはない、醜悪な姿で。
『なんて汚らわしい…あぁ、それなのに』
なんと、美しいことか。
―――既に狂っていた。
そう既に、狂っていたのだ。
「真鶸の体を、殊更、丁寧に手術したよ。橘倫子の二の舞には、さすがにできないからな」
桐生はくつくつと喉で嗤った。
それに、違和感を拭えない。
「桐生…?」
思わず、といった風に慶造が呟いた。
乾いた喉は水分を欲し、そして理解を欲していた。
桐生はやはり白濁を煌めかせたまま、嗤っている。
『―――オマエハ、ウツクシイ』
「見たかったのよ。造りたかったのよ。先の人類がして見せた功績を、何代にも渡る怨恨と因縁を、悲劇を、醜いヒトと、高潔なるアダムを使って、わたしが、指揮棒を振り、奏でたくなったのよ」
そこに多少の犠牲も厭わない。
なにより神は既に君臨し、贋作すら揃っている。