AEVE ENDING
『―――すぐ、解るよ』
そこに立っていた人物。
まさしく、「音」の元凶であるその男は、変わらず白濁に不埒を抱きながら、ただ静かに、こちらを見つめていた。
その男は。
「―――桐生…」
絞り出すように出した声は、みっともなく潮風に拐われた。
そこにいたのは確かに、「幾田桐生」、その人であり、桐生の左右には、リィとロゥの双子も跪いている。
しかし、双子の目に生気はなかった。
(…操られているのか)
「遅かったな、修羅」
それは皮膚を刺す「音」よりなにより、濁濁と耳にこびりつく不愉快な声だ。
桐生はその口許に酷薄な笑みを浮かべ、雲雀と向かい合った。
「どうして、ここにいるの?」
雲雀はやはり涼やかな表情のまま冷静に問う。
そうだ、どうしてこの男が。
この男は箱舟連盟に差し出され、アダム専科取締収監所に収容された筈だ。
あそこからは、出られない。
外部から入ることは可能だが、内から出ることは不可能だと言われる鉄壁の要塞。
(―――なのに何故、ここに)
雲雀の問いに、桐生は浅く笑みを吐いて見せた。
口端に寄った皺は老いと疲れすら感じる。
桐生が指先を軽く動かせば、跪いていたリィの体がかくりと俯き、「音」がやんだ。