AEVE ENDING
「…ほう、君がアナセスかね」
不愉快なまでに潔癖な視線がアナセスに向けられた。
それをすぐさま庇う、ロビンとニーロ。
ジニーはただ黙って、桐生を見つめていた。
「…幾田、桐生」
朝比奈が信じられないというような顔でその名を呼んだ。
何故、ここにいるのかという、純粋な疑問。
「…逃げてきたのですね」
アナセスが静かに口を開いた。
白銀の髪が風に靡く様は、言い様もないほど美しい。
「お祖父様も、哀しんでおられるでしょうに」
それは不可解な言葉だった。
雲雀以外はその意味深な台詞に眉を寄せたが、桐生はただ可笑しいとばかりに喉を鳴らす。
「史上の美しさを纏いながら尚、優秀でもある。まさしく、修羅に相応しい」
―――パチン。
桐生の指が鳴り、勢いよく跳ねた双子が飛び掛かってきた。
狙いは倫子。
他の者には目もくれない。
「…っ、」
顔を庇うように交差させた腕に、二人分の重量が掛かる。
みしりと鳴いた骨が、無駄に痛みを引き起こした。
「橘っ」
ロビンと朝比奈の声が重なる。
瞬時に瓦礫に埋もれてしまった体を脱出させるため、爆発させるように足元を跳ね上げれば、双子達も抵抗なく宙に吹き飛んだ。
(傀儡…。操られてるこいつらに、下手に手は出せない)
リィとロゥの気性なら知っている。
彼らは倫子にとっての「悪」ではなかった。
「…そんな生温いことを考えてたら、殺されるよ」
ザリ。
後ろ足で擦った瓦礫が転がる音を耳にしながら、雲雀を見た。
冷ややかな視線を向けながら、黙ってこちらを見ている。
「…意識ないヤツをぶん殴るような真似はしたくない」
その眼には、弱い。
なにもかも間違っているような気分に陥るんだ、あんたは正し過ぎるから。
「ただでさえ実力に差があるのに。君自身が殺られたら意味がないでしょ」
もっともなご意見。
でもさあ、雲雀。
「でも、いやなもんはいやだよ」
だってこいつらは痛みを知ってる。
互いを慈しむことも知ってる。