AEVE ENDING






「…いつからそんな腑抜けになったのかね?」

桐生が耳障りな声を出す。
朝比奈と武藤はただ呆然と見学に徹していた。
徹するしか、なかった。


ロビンは負傷した倫子の肩を支えながら、雲雀を一瞥する。
雲雀はパートナーに手を貸すことなく、事態を第三者として眺めていた。

その冷ややかとも言える表情は、あまりにも酷薄で。


(橘…)

ゼェゼェと喉を鳴らし肩で呼吸する様は、それだけで情を煽るというのに。



(雲雀、オマエは―――)


橘をなんだと思ってんだ。




「…っつ、」

歪んだ瞼を痙攣させながら、倫子は雲雀になにを言うでもなく桐生を睨みつけていた。

その眼光は鋭くありながら、憂う。


(―――こいつ…。あぁ、幾田桐生の策謀が露になったのは、雲雀とそのパートナーに大っぴらに手を出したからだったか)

恐らく、いや確実に、そのパートナーとやらは彼女なのだろう。



(でも、なんだ…?)

ロビンは舌打ちした。

違和感が拭えない。
桐生と倫子の関係は、そんなものか?



『―――いつから、そんな腑抜けになったのかね?』


いつから?



「あんたは相変わらず、いい趣味してるよ」

ロビンの思考を中断させたのは、これでもかと忌々しさを滲ませた倫子の声だった。

腸から吐き出すようなそれは、聞いているこちらが不快になるほど。


「…産まれた頃からこうでね。こればかりはどうしても変えられん」
「一回死んでみろよ。直るかもしんねーぞ」
「相変わらず、威勢だけはいい」

桐生と何気なく会話をする倫子に、思わず感心してしまった。
この身を縮こませるような威圧感の中で、軽口を叩く余裕がよくもあるものだ。


「…それより、双子に手をあげないのは何故かね?君を殺そうとしているのに」

白濁がくつくつと嗤う。

瓦礫に腰掛け、双子を盾にして完全に高みに座す様相は、まるで神を模倣しているようだった。





< 987 / 1,175 >

この作品をシェア

pagetop