AEVE ENDING
「…いつからそんな腑抜けになったのかね?」
桐生が耳障りな声を出す。
朝比奈と武藤はただ呆然と見学に徹していた。
徹するしか、なかった。
ロビンは負傷した倫子の肩を支えながら、雲雀を一瞥する。
雲雀はパートナーに手を貸すことなく、事態を第三者として眺めていた。
その冷ややかとも言える表情は、あまりにも酷薄で。
(橘…)
ゼェゼェと喉を鳴らし肩で呼吸する様は、それだけで情を煽るというのに。
(雲雀、オマエは―――)
橘をなんだと思ってんだ。
「…っつ、」
歪んだ瞼を痙攣させながら、倫子は雲雀になにを言うでもなく桐生を睨みつけていた。
その眼光は鋭くありながら、憂う。
(―――こいつ…。あぁ、幾田桐生の策謀が露になったのは、雲雀とそのパートナーに大っぴらに手を出したからだったか)
恐らく、いや確実に、そのパートナーとやらは彼女なのだろう。
(でも、なんだ…?)
ロビンは舌打ちした。
違和感が拭えない。
桐生と倫子の関係は、そんなものか?
『―――いつから、そんな腑抜けになったのかね?』
いつから?
「あんたは相変わらず、いい趣味してるよ」
ロビンの思考を中断させたのは、これでもかと忌々しさを滲ませた倫子の声だった。
腸から吐き出すようなそれは、聞いているこちらが不快になるほど。
「…産まれた頃からこうでね。こればかりはどうしても変えられん」
「一回死んでみろよ。直るかもしんねーぞ」
「相変わらず、威勢だけはいい」
桐生と何気なく会話をする倫子に、思わず感心してしまった。
この身を縮こませるような威圧感の中で、軽口を叩く余裕がよくもあるものだ。
「…それより、双子に手をあげないのは何故かね?君を殺そうとしているのに」
白濁がくつくつと嗤う。
瓦礫に腰掛け、双子を盾にして完全に高みに座す様相は、まるで神を模倣しているようだった。