あれ?俺生きてるんだ
あれ?これで終わりなんだ

修学旅行

 うちの中学の修学旅行は2年の3学期に信州にスキーと決まっている。
 伝統だかなんだか知らないけど、どうせ行くならもっとましな所に行かせて欲しいと思う。
 十数年前に、何人かの生徒が行き先の変更を校長に直談判した事があるらしいが、結果は聞いていないけど、今から行く所でわかる・・・
 「ただ今からバスは山道に入りますので、しばらくの間無線の妨げにならない様にお静かにお願いします」
 バスガイド(お世辞にも美人とは言えない)のアナウンスで少しの間車内が静かになる、しかしそれも数分程度だった。(思春期真っ盛りの世界で一番馬鹿な学年、中二にしては良くもった方だと思うよ)

 「なあ、知ってるか?今から行く旅館って数年前に修学旅行の学生が行方不明になったらしいぜ」
 身長はそれほど高くないが男前の本田正隆(世間で言うところの悪友だ)がどこで聞いたのかありがちな噂話を教えてくれる。
 「そういう噂って大半が、行方不明とか何とかその後が聞けない様な内容なんだよね」
 お世辞にも男前とは言えない理屈屋の高田誠二がそう批判する。
 「そうなんだけどさ、その話には続きが合って、行方不明になった生徒は春になってちゃんと発見されたらしいぜ」
 「それだと別に普通の話じゃね?」
 「見つかったのが熊の腹の中からでもか?」
 「・・・」
 「春になってたまたま旅館の近くの畑をあさってたその熊を旅館の親父が猟銃で仕留めたらしい、んで腹を割いて見ると、野兎とかの骨に混じって中学生ぐらいの指の骨やら熊除けの鈴やら名札が出て来て、何でも、冬眠中の熊ってのは普通は起きないんだけど、もし起こしちゃったら腹が減ってて普段の3割増で凶暴になるらしくて、それで食われたんじゃないかって話らしい」
 僕と誠二は何も言えず、沈黙が流れる・・・
 「って言う噂話が合ったら面白いと思うんだがどうだ?」
 ごつん
 「いってぇ!」
 僕と誠二は思わず正隆の頭を小突いていた。
 「本気で食われたのかと思ったじゃねぇか」
 僕はそう言いながら、正隆の話を聞きながらまさぐって、ようやく見つけた足元のバッグの中の熊除けの鈴をそっと放した。
 「熊に食われたってのは俺のアドリブだけど、行方不明の生徒が出たってのは本当らしいぜ」
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