たった一人の生存者
「やっぱ幸平の母さんの玉子焼きは旨いなぁ。」

井之上は満足そうに腹を叩きながら言った。

「後は冷凍だけどな。」

幸平は笑いながら言った。

「そう言うなよ。そんな事より…」

井之上の言葉を遮るように予鈴のチャイムが鳴った。

「あっ。じゃあまた帰りに。次体育だからさ。」

井之上は速歩きで言い、そのまま教室から出て行った。

「なんだ?まぁいいか。」

幸平は弁当を鞄に片付け、机から次の授業の教科書を取出した。

外の天気はくずれはじめた。

やっぱ傘を持ってくればよかった。幸平は思った。
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