たった一人の生存者
「大丈夫!大丈夫だから!」

香奈子は蘭を抱き寄せずっとそう呟いていた。

「…。」

蘭は黙り込み、涼しい顔でいつもと違う景色に見入っている。

いつもの景色は電車のスピードで絵の具を撒き散らしただけのような絵に見える。

電車はカーブに近付く。

「うわぁ〜!」

勝はひたすら窓を叩き続ける。

「出せよ!俺達を此処から出せ!」

勝の手からは血が滲む。

「母ちゃん…慎…ごめんな…。」

涙を流しながら勝は呟いた。

幸平の奮闘虚しく、電車はついにカーブに差し掛かった。
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