たった一人の生存者
一章 進み始めた物語
人が賑わう校門前。がっちりとした体つきの男が立っている。

「やべぇな…。持ち物検査やってやがる。しかも体育の田辺だ。」

幸平は心の中でそう呟いた。別にこれといって何も持っていないが。それが問題だった。

幸平の鞄の中に入っているのはノート数冊と筆記用具だけ。教科書は教室に置いてある。

ただこの学校。おきべん禁止なのである。怒鳴られるのを覚悟し幸平は校門へと向かう。

「おいっ!」

田辺は幸平を呼び止めた。

「なんすか?」

涼しい顔を上げ幸平は田辺の目を見て言った。

「鞄の中を見せてみろ。」
< 5 / 38 >

この作品をシェア

pagetop