たった一人の生存者
「先生オハヨー。」

後ろから手を上げながら走ってくる男子生徒がいた。

「おはよう井之上。」

田辺も挨拶を返す。

「幸平、どしたんだ?ほらっ!昨日俺ん家に忘れてった教科書。」

井之上はさっと自分の鞄から教科書を数冊取出し、幸平に渡し幸平に向かって軽くウインクした。

「先生、俺昨日こいつん家で勉強してて教科書忘れてたんですよ。」

白々しく幸平は言った。

「そっそうか」

田辺は怯んだ。その瞬間を井之上は見逃さなかった。

「じゃあ先生遅刻しちゃうんで。」

「ぉおう」
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