執事の名のもとに
「…お前…」
「…いいから、早く行けよ!」
俺が言おうとしたことが分かったのか、言葉を遮られた。
顔を反らした岩瀬の顔が若干赤くなっているように見えた。
「…サンキューな、拓海。」
「…………」
名字でなく、名前で呼んだ。
岩瀬…いや、拓海は仲間なんだし、名字なんて壁ができてよくない。
それになんだかんだ冷たいようで優しい奴だしな。
「借りいちだからな。」
「ははっ!倍返しするよ。」
拓海にもう一度お礼を言うと庭を目指して走りだした。
拓海の横を過ぎる時聞こえた、頼むって声も一緒に。