執事の名のもとに
「…拓海。」
「…君には、負けたよ。」
突然のことに目をぱちくりさせると、拓海は恥ずかしそうに頭をかいた。
「…俺は、何も苦労もせずにいい成績を出すお前がうざくてしょうがなかった。でもその反面、羨ましかった。なんだかんだ言って、お前のことは恨めないわ。」
そして、拓海はすっと手を差し出してきた。
その手に自分の手をそっと重ねた。
「…俺はいつも感情に流されず、冷静に物事を判断できるお前を尊敬してる。今までありがとう。」
「…ああ、こっちもありがとう。」
初めて、拓海と笑った。
「じゃあ、また。機会があれば。」
拓海は去っていった。