銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
自分がこんな幼い娘に敗北した?

信じたくない……いや信じない。

「私は珀月だ……

敗北なんて赦されないんだ!!」

珀月は最後の力を躯の芯から出し、鎌架・哉霧をまた再生する。

再生された哉霧は今までのタイプとは違う。

それは弓と矢だった。

シルクの糸の様にか細いそれを、弓に填め、討ち放つ。

まこはすれすれに交わすが、かなりの高威力らしく、当たった壁は激しく崩壊する。

「ほぅ……其れが本来のあなたの鎌架か。

弓とは実に面白いね。

でもね、飛び道具程相手を逃がしやすい物は無いの。」

相変わらず優勢なまこ。

全く面白くないと言いたげな顔をしながら珀月はまた矢を討つ。

「速さがてーんで無いね。

飛び道具は速さがメインなのに。

つまんない、終わりにする。」

なーんだと言ったばかしの顔をして、まこはさっきのクラリネットを出す。

ただ、今度は吹くのではない。

さっきの錯乱方法は、精々最初の一回目のみ。

二度目には耳を塞ぐなりすれば回避されてしまう。

これは一発のみの大技なのだ。

では本来はこのクラリネット、どう使うのだろう?

たかだか一発の大魔術の為だけに、こんな躯の大半もあるクラリネットを持ち歩く筈がない。

やはり何か別の使用目的があるのだ。

「解放していいよ。

帝唖羅(てぃあら)。」

まこは名を呼びながら優しくクラリネットを撫でると、
クラリネットに口付けをした。

クラリネット……帝唖羅は紅い眩い光を発しながら、姿形を変えていく。

「あなたはやっぱりその姿が一番美しいよ。」

その姿はハンマー。

よく玩具で売っている赤いハンマーとは違い、高圧な銀の鋼のハンマー。

まこの身長より高く、何よりもでかいハンマー・帝唖羅。

こんな物で一発やられたらひとたまりも無いだろう。

「砕けろ。」

ハンマーを珀月にまこは全身全霊の力を込めて振り下ろした!
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