銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
「!! 哉霧ーーーー!!」

珀月は帝唖羅に向かって哉霧の矢を討つ。

空を切り、最速で帝唖羅の中心に向かう哉霧。

帝唖羅は音……いや、これは悲鳴。

悲鳴をたてながら、哉霧を押し返す。

「帝唖羅、御褒美を増やしてあげる。

じゃあねー、支配下の誰かの魂を上げるね。」

まこがそう呼び掛けると、帝唖羅の威力は膨大する。

今までの其れに較べたら有り得ない威力。

「! 魂媒器(こんばいき)……

人の魂を媒介にする器。

此処までの威力……
まこ、あんたの魂媒器は誰の魂が媒介になっている……?」

一歩二人から離れている独楽の問いは、
戦いに無我夢中になっているまこには到底届かない。

彼女も珀月や鎖葉斗程ではないが、戦いを楽しむ人種だった。

『終盤。

一千花への最終解放を命ずる。

粉砕せよ。』

最後のまこから帝唖羅への解放要請。

もうまこはさっきの言葉は撤回した。

彼女を……珀月を最高の死界騎士と認め、此方も最高の力で勝負に出たのだ。

「さぁ、躍りましょう。」

帝唖羅をまるで、舞踏会で躍っているかの様に振る。


バンッ


冷たい、死体の様な大理石の床すら諸ともしない。

砕け散る。

黒無化 まこ。

黒……闇すらも、彼女の前では恐怖し、無力になる。


シュッ


痛い。

まともに珀月の腹に、帝唖羅が入った。

死界の愚民達は皆、声を揃えて彼女が最強と言った。

そう、死界で彼女にかなう者は居なかった。

戦は勝つから楽しいんだ。

なんて幼い考え方なんだ。

一番愚かなのは自分だった。

痛い。
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