銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
「吸い上げろ。」

まこは帝唖羅を床に突き刺す。

床の大理石が、周りの家具が、何もかもが帝唖羅に吸い上げられ、呑み込まれていく。

その場は漆黒の空間と化す。

存在するのはまこと独楽、珀月のみ。

「今は此だけ。

ごめんね。

すぐに誰かの魂をあげるから。」

帝唖羅は元のクラリネットの型に戻ってゆく。

「さぁて、説明してくれるかな。

これから仲良くしまよう。

珀月ちゃん。」

最高の勝利の笑みをするまこ。

酷く引きつった顔をする珀月。

二人の少女を、わけがわからん様子で見る独楽。

バラバラだった三人は、場所を万華鏡の応接間にかえると、話し始めた。

「私は珀月。

……女だ。」

やっぱり、と言った感じで独楽は首を縦に振る。

まこはほへーっと、男のふりをしている珀月に感心している。

いや、関心の方が正しいかもしれない。

「はーいっ質問!

どうして珀月ちゃんは男のふりしてるんですか?

爾来様の話だと、珀月は大男だって聞きました!」

右手を挙げて、質問するだけでわーわー騒いでいるまこの頭を、独楽は一発叩く。

「話せば長くなるが……

私には二人の兄様がいる。

その兄様とは……爾来様なのだ。」

へ。

二人の脳内は一瞬活動を停止する。

関節に述べると、何も考えられなくなる。

「じゃああんたは……爾来の妹なのか!?」

独楽が口をパクパクさせる。

ただ冷静に珀月は頷く。

「うにゃにゃ、うにゃーっ!

じじじ、爾来様にはさっきの戦いは内緒にしといてね!

まこ、殺されちゃうよーっ!」

わけのわからない悲鳴を上げながら、必死に珀月の手をぶんぶんと振るのはまこ。

あの闇すらも恐怖する、黒無化 まこなのだ。

解っただろう。

前代支配者・爾来。

支配力が無くなろうと、それ程、彼女達支配下には末恐ろしい存在なのだ。

「……兄様は……爾来兄様は、私が鏡界に来ている事は知らないんだ。

珀月は元々、確かに大男の騎士だった。
錐前 壱時(きりさき いちじ)

人間界では名がしれる騎士……侍だ。」
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