銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
「死ねっ――――」

狙い討つ者だ。

「!! 敵!?」

少女は、とっさに両手を襲撃者に向ける。

すると、薄い白銀色をした結界が、両手から張られる。

「なっ、なんだこりゃ!?」

声は驚き、焦りが混じる。

だが、少女は夢中で攻撃を続けた。

『支配者の名に命じる。

我を守れ!!』

少女が手にする木の杖。

そこのてっぺんに付いている、蒼い玉が光る。

彼女はこの杖を白銀の床の上で振るい、魔法陣を描く。


コオオオ


水が凍り付く瞬間はこんな音がするのだろう。

『満ちれ 百竜(びゃくりゅう)』

魔法陣から出て来たのは、黄金色の竜だった。

けたたましい叫び声を上げながら、竜は空中を支配する。

何て妖艶で、美しいのだろう、誰もがかの竜を見たらそう思うだろう。




「う、わぁぁあああ!

化け物だぁ!」

だが、出番無く竜は天空に還る事になる。

「えっ……」

少女は襲撃者……深海色の髪をした少年に対しての、攻撃の手を止める。

途端に竜は天へと還って行く。

「化け物使いめ!

うちの村から出ていけ!」

「あ、あなた、爾来の手下じゃないの?」

「地雷? んなもんねーよっ!」

やばい、少女の脳内に警報が鳴る。

どうしよう……叱られる、叱られる、叱られる!!

「あーらら、駄目じゃないですか。」

来た!

来てしまった……

「きゃ、キャルナス……」

「駄目じゃないですかぁ、一般人に支配力見せちゃ。」

微笑みながら現れた金髪の男は、少女の髪をくしゃっと撫でた。

少年はその金髪の長身の男を見て、鳥肌を起てる。

震撼した。

此処まで美しくも儚さを想わせる人がいるとは……

だがもう一つ、彼には震撼させられる。

髪を祓ったときに見えた。

項にはしる、十字型の苦々しい傷。

一体彼女たちは何者なんだ?

「ご、ごめんなさい!

あたし、この人が支配下の人かと思って!」

しょうがないですね、と少女に笑って許しをあげる男。

少女はほっと胸を撫で下ろした。
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