銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
「さぁて、貴方には忘れてもらわないとね。」

笑う金髪の男。

だけど心は笑っていない。

少年は恐ろしくてしょうがない。

肩をガクガク震わせる。

命乞いをしよう。

其れしかない。

「あ、あの……」


グゥ


沈黙の中、響くのは腹の音だった。

「……貴方、お腹減ってるの?」

少女は少年に話しかける。

金髪の男は厄介そうな顔をして、少女を睨む。

「これをお食べ。

誰にも私たちの話はしてはだめよ。」

「うっ、うん!」

少女は少年の手に、しっかりと紙袋を握らせた。

彼女の渡した紙袋の中に入っている出来立てのパンは、
少年の腹、心さえも埋めてしまったのを、
金髪の男……
キャルナス・シャルドネは悟った。

(流石、ミサだ。

心さえも意のままにできる、支配力の保持者。

なのに其れを使わず共、人の心を魅了する。)

最後にやはり私が見込んだ君主だ、と誇らしげに付け足した。

白江 美紗。

元は人が造った能力、支配力。

其れは人が造った筈なのに、人を超えてしまった超能力。

彼女は剰りにも不可解な状況から、この能力を手にしてしまった。

だがこの超能力は使おうが、使いまいが、最後に待ち受けるのは死のみ。

無理矢理、前代の能力保持者にこの超能力を押し付けられてしまった美紗。

そこに唯一手を差し伸べたのが、白露 鎖葉斗だった。

そんな白露に導かれ、美紗を護ろうと集まったのがキャルナス達だ。

元の能力保持者に能力を返還するために、彼女達は鏡界という、支配者の本部を目指すのだ。

今は其処に入る為の四つの鍵を探している最中だ。
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