銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
『導きの真間に。

フィルオリッダ・シェラトン。』

死界への鍵を空間に差し込み、キャルナスは死界の扉を解放させる。

出て来た巨大な扉は天にまで届きそうだった。

黒い、何よりも真黒なその扉は、何かに比例しているのか?

黒くなったり、白くなったりする。

“な゛ンだソの゛巨大ナ扉゛ハ……”

悪魔の醜い声が白銀界の中から聞こえる。

必死で白銀界から抜け出そうと、悪魔は這いつくばっている。

「教えて差し上げましょうか。

此が私の鎌架ですよ。」

鎌架は死神の持つ、特有の武器。

魔法や、屍、悪の気等から構成される。

珀月のとは大分形状が違う。

彼女のは弓の形だった。

だがキャルナスは扉。

天に続く漆黒の扉なのだ。

「私は剰り、腕っ節の勝負は好きじゃない。

だからね、異界の彼等に手伝って貰うんです。

出よ、紅鬼(こうき)」

キャルナスが、扉に巻き付いていた鎖を、思いっ切り引きちぎった。


《ギシャァァァアアアアアアアア》


すると、中から出て来たのはどす黒い色をした、鬼。

だが顔は人間の頭蓋骨の様。

腕や手も、赤黒い肉から骨が突き出ている。

「さぁ、時間は六十秒。

貴方の自由を赦しますよ。」

キャルナスはにっこり微笑んだ。

紅鬼は牙を突き出し、酷い顔で笑う。

そして爪をたてた両手で、扉を持つと、
一気に扉を粉砕する。

あの巨大な、頑丈そうな扉が一気に粉砕された事から、
美紗たちは思わず口をポカンと開ける。

「あぁもう。

貴方は扉を“開ける”事が出来ないんですから。

まぁ、私は貴方のそんな“壊す”のが好きな処に、自分を重ね合わせたんですがね。」

また哀しい顔をするキャルナス。

美紗はただ見つめる。

直ぐに駆け寄って、問い詰めたかったが、今は戦闘中だ。

(でも、後で聞いても良いよね……

キャルナスさん……)
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