銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
「今日の夕方六時に、世臨時計台(せいりんとけいだい)で。」

そう一言間口に鎖葉斗は言い残すと、
小さいメモをこっそりと間口の手に握らせた。

そして静かに教室へ戻っていった。

間口は其の場でメモ張をゆっくりと開いた。






「……なんで美紗来なかったのかなー……

何時も学校休む時は連絡くれるのに」

其の日の放課後。真帆は掃除当番で一人教室に残り掃除をしていた。

「其れはキミのせいなんじゃないの?」

真帆の背中際で声が。

瞬間的に真帆は握っていた箒を後ろに振り落とす。


ガッ


物と物がぶつかりあう音が、大きく教室に木霊した。

「うわぁ、さすが霧草宴(きりくさえん)の、
8代目当主・霧草 忍(きりくさ しのぶ)様だね。」

声の持ち主は白露 鎖葉斗。

鎖葉斗が握っているのはサランラップの芯だった。

なんだ、そんなものか、と思う人もいるかもしれないが、
箒をサランラップの芯で押さえつけた。

此れはかなりすごい事だ。

「何故お前が其の名を……」

「“何故知ってるのか?”そんな事を問いかけなくてもいいじゃん。

大事なのは“何故その名前をいきなり口にしたのか?”だろう?」

真帆は箒をゴミを掃く形に握り戻すと、鎖葉斗に問う。

「では何故その名前を口にした?」

「ははは……“支配者”」

其の言葉を呟くと、真帆は血相を変えた。
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