銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
Wit2.5 界の全知者。
此の数多の世界の知を極めし者は全知の化身────
「白露……鎖葉斗!!」
「やぁ、死界の知略者。」
救世主は御挨拶と言ったばかりに、ルネサンスに皮肉を飛ばす。
「鎖葉斗……」
キャルナスは笑いながら、帰ってきた仲間を快く出迎えた。
「ふふふ、白江様は相変わらず、僕がいなきゃ何も出来ないのかな?」
悪魔をも怯ませる男は、美紗の頭をくしゃっと撫でた。
「……散々、心配させて……
遅刻にも程があるよ!」
ポカポカと美紗は鎖葉斗の頭を叩いた。
「あはは、ごめんね。
ちょっと其処の意地が悪い低級な悪魔さんにね、質の悪ぅい悪戯をされて。」
ルネサンスに向かって鎖葉斗は指さす。
何だ何だ?と言わんばかりに皆の視線が鎖葉斗とルネサンスを交互に見やる。
「僕の記憶の世界に入って来て。
お仕置きだよ!」
鎖葉斗は両手に力を込めると、幾多の鎖が巻かれた鎌を出す。
鎌は眩い位の紅い光を放つと、笑い声を漏らした。
《クククククッッッ!
鎖葉斗ぉ。
やっと俺を呼ぶ気になったのかいいい?》
鎌の鎖が鎖葉斗の首に巻き付く。
「ああ、赦雨薇唖(しゃうびあ)
逝くよ────」
首に巻き付かれた鎖を断ち切ると、
赦雨薇唖を鎖葉斗は振り回しながらルネサンスに向かった。
「珀月、援護は要らないから。
キャルナスと一緒に白江様を護って。」
「はい、兄様。」
珀月は憧れの兄の背を頭に焼き付ける。
「に、兄様って……珀月は鎖葉斗の……」
情けない事にキャルナスは口をポカンと開ける事しか出来なかった。
「はいっ。
憧れで、大好きな兄様ですっ!」
子供らしい顔を見せて、珀月は答えた。
珀月は鎖葉斗に余程の自信があるらしい。
「鎖葉斗君……死んじゃ……嫌だよ?」
一ヶ月ぶりの主人の目を見た。
自分ほったらかしで、人の事ばっかり心配して、世話焼いて……変わってない、其の甘さ。
でも……嫌いじゃないよ。
僕は、貴女が新しく造り上げる世界を見たいから。