銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
「うんっ。」

自然に笑みが零れた。

凄いね、貴女の前だったら封じ込んでいた感情が甦ってくる。

「美紗っ。」

美紗はキャルナスの背に負ぶさると、三人は森の外へと出て行った。

「白露……

何時から気づいた?」

ルネサンスはキャルナスの魔法から解放された両腕を、ぽきぽきとならす為に動かす。

「茶亜夢が支配下に入って来た頃からさ。

チャーム、低級女悪魔だった。

任務で僕が殺した其れが、支配下に入って来た。

怪しむしかないだろう?

まぁ爾来も爾来だね。

僕にチャームを殺せと命じたのは彼奴なのに……

其のチャームが支配下に入ると名乗り現れたのに、表情一つ崩さず面白がって……支配下に入れる。」

やれやれと鎖葉斗は首を振る。

だが、キツい……キツい目で彼は遠くで療養している愚弟を見た。

「記憶の世界には赤月を喰らって入って来てさ。

まぁ彼女には逃げられたみたいだね。」

全て、全て解っているのか、こいつは。

「大当たりだ。

ふふ、では解るだろう?

私とお前、戦ってどちらが勝つか?」


鎖葉斗は赦雨薇唖を撫でながら、呟く様に言った。

「僕に決まってるだろ?」

「大外れだ!!」

衝突し合う二つの力は風を巻き起こす。

抉り出された地面、空に舞う土の塊は、次第に砂埃へと姿を変える。

「ははははは!

やはり魔王の血を挽きし、三片の一人だ。

全知の能力を持ちし、鎖の破片……

貴公の血、さぞかし美味であろうて!!」

シルクハットで顔を隠すと、次は先程の十字架の入れ墨をした男になった。

「大悪魔・ヴェルディをも取り入れたか。

久々に樂しく殺り合えそうだ。

なぁ赦雨薇唖?」

鎖葉斗の問い掛けに、赦雨薇唖は舌なめずりをした。

《クククッッッ。

俺は絶望の悲鳴さえ浴びれれば、其れで良いんだ。

歪む心に恐怖が絡み合う、死への絶望ぅうう……

極上の其れさぇ飲み干せればぁああ、もぅ俺は満足さぁああ。》
< 153 / 197 >

この作品をシェア

pagetop