銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
「魔術を極めし者は皆知っている話だ。

僕は愚かだと思うね。

一角の聖騎士とも有ろう者が……

意中の相手を殺されたからって、主人に刃向かうなんてさ。」

鎖葉斗の目から光が消えていた。

人を殺す時、鎖葉斗がする目だ。

「……もっと鎖の破片とは話たかったが……

しょうがない、幕引きといきましょう。」

鎖葉斗の目に気づいたのか、ルネサンスはヒューマノイド・リライトの胸を刺していた大刀を抜き取った。

鎖葉斗は赦雨薇唖の鎌に魔力を全て注ぎ込む。

赦の力は守の力。

守りの鎌で敵の攻撃を遮断……

後に遮断した攻撃を吸収し、倍返しにする技だ。

ヒューマノイド・リライトは聖騎士・イノセンスが聖天使・リライトの魂を媒介にし、女当主を殺したとされる大剣を使う……支配術に少し近い皇位魔術だ。

二つの衝撃……どうなるか検討もつかない。

「ふふ。」

お互い気を集中させ、最良の隙を探す。

そんな沈黙の中、ルネサンスの笑い声が漏れた。

「まぁ、貴公がイノセンスと自分を被せるのは勝手だがな。」

突然のルネサンスの一言……

鎖葉斗の魔力がほんの少しだけ波長が外れ、揺れ出した。「何が言いたい……?」

窘めるかの様に、ゆっくりとルネサンスは言葉を発する。

「良いことを教えてやろう。

白江 美紗、彼女の心は相も変わらず間口 吾平に浸かりきっているぞ。」

小刻みに鎖葉斗の赦の楯を握る手は震えた。

彼が恐怖や絶望を抱く事は無い。

そう、彼の場合は怒りだろう。

「ははははは!

そうだ、そのまま感情に飲み込まれてしまえ。

殺し合いに冷静になれない人間程、脆く小さい物は無い……」

ルネサンスは静かにイノセンス・リライトを鎖葉斗へと振るい上げた。

《おいぃぃい。

鎖の破片よぉぉお。

俺をちゃんと使えよなぁぁああ。》
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