銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
赦雨薇唖の木霊する大声も、鎖葉斗には通じなくなりかけている。

機械的――――

彼には人間としての感受性が全くと言ってよい程、無いに等しいのだ。

人よりも機械に近い彼は、美紗に触れることによって始めて手に入れた感情を、
上手く制御する術を知らない。

《若いなぁぁああ。

鎖の破片よぉぉおお。

好きな女についてからかわれた位で、
熱くなんなよなぁぁああ。》

「うっ、煩いぞ!
鎌架の分際でっ……」

嫌な奴だが、こいつの御蔭で何とか機械的に戻らなくて済んだ。

「逝くよ――――」


ガガガガガガガガ


赦の力とヒューマノイド・リライトが正面激突した。

白の光と黒の闇……混ざり合う異色。

土煙が目に入る。

噎せ返りそうになる、濃い埃。

だがそんなの気にして入られない。

鎌に研ぎ澄ます――――

魔力と気を。


バンバンバンバン


森は暗黙に包まれた。 






「兄様はな、白江様が好きなんだ。」

「えぇぇぇえっ!?」

森の出口へと走っていたら、珀月の突然の発言。

キャルナスは叫び、愕くしかなかった。

剰りにも大きな声で叫んでしまったので、
キャルナスの背で眠っている美紗が起きないか心配になったが、
すやすやと小さな寝息をたてて、彼女は寝ていた。

「兄様が恋敵だ。
お前はぜーったい勝てんな。」

珀月はキャルナスに向かって、右手の中指を突き立てた。

一瞬ムスッとしながら珀月を睨むと、キャルナスは和やかな口調で言った。

「私は良いんです、美紗と話したり、こうやっておぶったりするだけで、
十分幸せなんですから。」

気に障ったのか、珀月は額に青筋を立てながら反論した。

「変態、そんな性分だから幸せを逃し続けるんだ莫迦者が。」
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