銀鏡神話‐翡翠の羽根‐

Wit3 一幕の出来事。

哀歌の序曲――――



『りっくん!』


甲高い声。

でも、綺麗だよ。

お前の何もかもが透き通っていて、美しいんだ。

天使なんて仕事してっから余計解るよ。

お前程、煌びやかな女はいない。

『りっくん、支配下に入れたんだね!』

俺の手を取ると、彼奴はにこやかに笑う。

仄かな赤い髪から、くすぐったい優しい匂いが俺の鼻を包む。

『おう、赤月先輩。』

『うむ、よきにはからいたまぇー! 独楽くん!』

可愛いな……

初めて人をここまで愛しいと想ったんだ。

ずっと一緒にいたいと思ってた。

万里が爾来が好きだって事は知ってた。

歯を食いしばって、二人がカーテン越しで楽しそうに会話をしているのを我慢していたんだ。

隠し通してきたんだぜ?

キャルナスや七瀬にはバレちまったけどさ。


『りっくん!』


何時までも見ていたかった、お前の笑顔。

何時までも聞いていたかった、お前の俺を呼ぶ声。

なのに、なのにな……






『あたしは爾来様をお守りせねばっ……!!』


『……駄目だよ。』


『万里――――!!』






歪ませたんだ、彼奴の笑顔を。


『りっ……く……ん……死に……たく……ない……』


壊したんだ、彼奴の綺麗な声を。

赦せなくなった。

白露 鎖葉斗を。

万里を殺した白露を。






「万里、仇は俺が……」

銀露に濡れたナイフを磨きながら、夜空の君に誓う。





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