銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
いや、少年といった方がいいのだろうか?

『さぁ…… お前から全てを奪い返すよ、爾来……』

茶色い髪に青いくりくりとした瞳が特徴的な、少年とも少女ともいえる顔付きをした……大体、小学校高学年くらいの男の子が、身の丈程の鎌を背にぶら下げながら歩んできた。

酷い殺気を放ちながら。

《おいぃぃいい。

鎖の欠片よぉぉおお、爾来の首をとりゃ撤退かぁぁああ?

他の奴等とはやりあわねーのかぁぁああ?》

背の鎌が強い轟音を立てながら子供――――白露 鎖葉斗に問い掛けた。

鎖葉斗はやれやれと言わんばかりに首を横に振る。

『赦雨薇唖、爾来が一番強いんだよ?

爾来を殺せば、僕等が最強だろう?

他の奴等なんてゴミ同然さ。』

そっか、とあっさりと鎖葉斗に丸め込まれ、赦雨薇唖は納得した。

『支配力を取り返し、彼奴の莫迦な計画を潰す。

いいね赦雨薇唖。』

目を瞑り、集中しながら赦雨薇唖を宙に翳すと、鎖葉斗は糸が空でぷつりと切れ流れ行くかの様に、目覚めた。

蒼かったアクアマリンの瞳。

左目だけを赤々しい、永年にわたって血を吸い尽くし成熟したルビーの様に光らせる。

《死神の眼光かぁぁああ。

俺様がまだこんな不便な所に閉じ込められる前の大好物だったさぁぁああ。》

舌なめずりをしながら、赦雨薇唖の目は鎖葉斗の瞳に釘づけになった。

今にでも抉り出し、頬張りたいと言わんばかりに。

『大丈夫。 支配下の中には死神がいるらしいよ。

其の人から貰っちゃえば?』

《いいなぁぁああ。

久々に美味い晩餐といきてぇなぁぁああ。》

そうだね、と彼が一言サラッと言ったところで、二人の会話は途切れた。

現れたからだ。

望郷への唯一無二の外門――――

此処を通れば支配者・爾来は目前だ。

『逝くよ――――』

赦雨薇唖の赦の力を解放すると、鎖葉斗は魔力を根源としている門。

其れを支える、二本の根深そうな鉄の柱……魔力発信柱に斬りかかった。





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