銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
シャロンの主……赤月 万里だ。

『キャルナス、回復魔法じゃ間に合わない。

再生魔法を。

あたしは万里の所に行ってくる。

シャロンがやられたんだ。

きっと強いよ……』

まこは屋根と屋根を渡り合いながら、鏡界の天井……望郷に向かった。

キャルナスはやれやれ、と首を振りながら、シャロンの前足があった部分を掴んだ。

折れ曲がった骨が突き出ている。

『・蘇れ、白夜の魂よ。

天地の詩を捧げし千姫……

永久の宝石を継ぎし者が望む。

再生せよ……

ラージマ・リエルド・』

呪文の詠唱が終わると、シャロンの無くなった前足の辺りから樹木が生えてきた。

其の枝が水色の泡になり、少しずつ、傷を補い、泡が前足まで集まり、次第に足の形を象る。

あっという間に何も無かったシャロンの前足は、後ろ足と同じ状態になった。

『さて…… 私も向かいましょうか。』

シャロンを屋根の下に置くと、キャルナスは望郷へゆっくりと向かう。






『万里……』

独楽 裡音は相も変わらず、図書館の机で頬杖をつきながら、悩み考えていた。

其れは赤月 万里に自分の気持ちを伝えるかどうかだ。

さっき、キャルナスとまこに……


『気持ちを伝えて堂々と振られれば諦めがつくかな?

でも今までの関係が壊れたらやだしな……』


と、質問をぶつけたのだ。

結局、莫迦にされて終わってしまったが。

『よし、やっぱり万里に言うしかねーな。』

椅子から立ち上がった時だった。

悪夢のサイレンが鳴った。


“緊急連絡、緊急連絡。

侵入者が望郷に接近中。

支配下は直ちに、Bランク以下の任務は放棄し、爾来様への守りを固めなさい。

繰り返します。

緊急連絡、緊急連絡……”


侵入者か……

久しぶりだなそんな奴。

(まあ爾来がどうなろうと知らねーしな。

適当に行くか。)

独楽は上げかけていた腰を下ろした。





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