銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
「うん、昔から、
何時だって一目を気にしてて、碌に一緒に入れなかった。」

美紗の顔はまた遠い昔を見ていた。

哀しそうな其の顔に見かねたのか、一人、席から立ち上がったのは、

「あたしもトイレいってくるね!」

幻のトイレへの祈願者No.2、真田 真帆。

弁当を美紗に押し付けて間口が行ってしまった車両に向かう。

「真帆!」

美紗が声をかけようとした時には真帆は消えていた。

武装侍・霧草宴の当主なだけある。






「間口。」

隣の車両で、移り変わっていく景色を見つめて黄昏ていた間口 吾平に声をかける真帆。

「なんだ?真田…」

「あんた、なんで美紗をふったの?」

突然の真帆の問いにギクシャクする間口。

「……オレが美紗を恐れたから。」

間口からでたのは意外な返答だった。

「……まだ恐い?」

「……解らない。」

「あたしには間口も美紗も両思いに見えるけどな。」

真帆の突然の両思いじゃないか宣言に超ビビりきょどる間口。

ポケットから飴玉の袋を出して、細い綺麗な指で袋を裂いて、真帆は間口に其の塵を投げつけた。

顔面に直球した袋を、情けない顔で間口は取った。

「間口も莫迦だよね。

目立ってる奴を見つけては美紗の手を借りて潰してるんじゃなくて、
美紗と仲良くしてる男子、気のある男子を潰してるなんてさ。」

ポイっと放り投げるように、桃色の飴玉を口に入れる。

そんな彼女の正面には、図星だったみたいでますます顔を俯かせる間口がいる。
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