銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
Accident1 転校生。
「美紗ー! はよっ!」

何時もと変わらない朝が来た。

賑う昇降口に、大勢の生徒達が喋りながら自分達の教室へ向かう。

美紗も其の一人だ。

大抵は、朝、真帆に下駄箱で会って、一緒に教室まで行く。

今日は大抵の日だった。

「おはようま…」


“投稿ありがとうございました。白江 美紗さん。”


「っ……」

真帆の顔を見ると、美紗は二週間前のあの出来事を嫌でも思い出す。

「美紗……大丈夫? あんたおかしいよ最近……」

そんな美紗を真帆は心配する。

あれから二人の間でこの新しい日課ができてしまった。

「……うん……大丈夫……大丈夫……」

大丈夫、美紗の最近の口癖。

此の言葉を繰り返すと、少しだけ美紗は楽になる。

美紗と真帆のクラス、ニ年五組。

教室に美紗と真帆が入ると、丁度チャイムが鳴った。

「おお、ギリセーフ!!」

真帆がおちゃらけながら言う。

美紗はそれを見て笑う。

ああ、元気付けようとしてくれるんだ。

改めて真帆の優しさを美紗は実感した。

「今日は転校生を紹介するぞー!」

のそのそと教室に入って来た担任がそう叫ぶと、
さっきまでこそこそ喋ったり、手紙を回してた生徒は一瞬で大人しくなった。

だが、沈黙になった教室の中、今だにこそこそと喋ってる男子がいた。

斜め右前の男子に消しゴムを投げる。

振り返った男子は額に軽く青筋を立てていた。

「なぁ、昨日のエンターステーション見た?」
< 5 / 197 >

この作品をシェア

pagetop