銀鏡神話‐翡翠の羽根‐
「どうなってるの此れ!?」

「ロウェーブは空間移動魔法弾だ。

放った所にワープできるんだ。」

魔力があると知ってから数日で、もうほとんど魔法についてマスターしてる。

なのに……自分は支配力、自分の中に眠る力について何一つ知らない……

情けない……少し自己嫌悪に入る美紗。

『気炎万丈 ファイ・ズ・ガーゴイル』

さっきと同じ声が真上から降りかかる。

周りの木が焦げる匂いを微かに感じる。

『高上鬼神の弾・ガリネス』

蒼白色に光り出す間口の右人差し指。

『飛べ』

飛び出す光は、気炎万丈の炎の砲を内から破壊していく。






場所は変わって鎖葉斗達。

「なんで美紗たちが見つからないんだ!?」

慌てる忍。だが鎖葉斗とキャルナスはいたって冷静沈着。

「此処に来ているのはウィオですね、あの高密な結界といい。

きっと幻界(げんかい)を作り出したんでしょう。

残念ながら、見事に白江様と吾平君は嵌ってしまった……」

鎖葉斗は失敗したと言わんばかりに、大袈裟に首を振った。

結界と結界の間にできる空間は、
結界を張った者……結界師の自由空間となる。

此の空間は結界師の思った通りに動かせる。

其の空間を、幻界という。

「其れは大変ですねー……でもワタシが心配なのはウィオの傀儡能力の方だ。

今まですんなり来たが……やっぱり裏があると思いますねー。」

眉間に皺をよせるキャルナス。

裏……一体何のことだろう?

「裏とか考えすぎだよキャルナス。大丈夫だよきっと。」

さっきと違って平然を保っている忍。

いや、保とうと努力している、の方が正しいだろう。


《ケケケケケケケケ》


小さい、すごい微かな声。

此の場にいる誰にも聞えなかった声。

発したのは忍の背中で意識を失っている、新羅 澄江だった。
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